前世紀遺跡探訪<80s-バブル終焉>

80年代~バブル文化圏終焉(実質的なバブル崩壊は91年だが、バブルの延長的な空気が即終了したわけではないので90年代前半までとりあえずバブル文化圏と仮定しとく)の音楽や音楽をとりまく事象について、あれこれと。

シブがき隊 - NAI・NAI 16(1982)

一応シブがき隊世代だ。
高校の時、クラスで「シブがき隊の誰が一番好きか」投票やってて、「興味ないし誰が誰かも見分けがつかね」と拒否しようと思ったが、「拒否でもしようものなら女子ではないとみなす!」という雰囲気があって怖かったので、一番投票数が伸びてなかった布川に1票入れた。どうですかこの同調圧力。意思決定と社会的排除と日本的ムラ社会の是非について考えさせられますね。もうどうでもいいですが。
ちなみに布川に1票を投じたボランティア精神がアダとなったか、以後卒業まで同級生達から「布川の切り抜き@明星」をいただくこととなった。「いらね」とも言えないので有難く頂戴しましたが。どうですかこの同調圧力。意思決定と社会的排除と日本的ムラ社会の是非と、ついでにエコロジーについても色々深く考えさせられて、論文の1つや2つは書けそうです。ホントは考えてないのでもうどうでもいいですが。


シブがき隊は80年代前半を飾るジャニーズ・アイドルである。
TBS系ドラマ「2年B組仙八先生(81年)」にレギュラー出演している生徒役の中から、人気の高かった3人(本木雅弘薬丸裕英・布川敏和)を選抜し結成されたグループである。…ということになっている。
 


左:薬丸(はなまるカフェ
中央:布川(妹が元おニャン子クラブ
右:本木(アカデミー俳優にしてシェキナベイベ内田裕也の義理の息子)
 
 
別に「この3人が女子人気が高かったから」という理由というか結果があったわけではなく、まあ最初っからこの3人でグループ組ますつもりだったんでしょう。3人ともジャニ所属だし。「金八」から「たのきん」を輩出してイケイケドンドンだったジャニーズ事務所が更なる支配体制を確立せんと、「もう1世代下向きの男子アイドルグループ@桜中学シリーズ」を企画したもの。「はじめに結論ありき」ってやつ。
つか、仙八における女子人気だったら布川敏和より、寧ろ本田恭章だろうよ。

 

本田恭章(上田夏彦@2年B組仙八先生)
 
 

「ナイフが友達」な危ない美少年・本田恭章こと役名:上田夏彦さんの眩暈がするほどニューロマな私服は桜中学シリーズの語り草だと思う。語り草といいつつ、「仙八」自体が桜中学シリーズではマイナーな存在なので思ったほど巷で語られてないのだが。ググっても画像も出てこねえし。語ってんのは私だけかよ。孤独感で死にそう。



さて、シブがき隊。
元は確か4人だったんだが、1人途中で消えて、本木・薬丸・布川の3人体制になった。
グループ名は、「いかにもジャニーさんが3分くらい考えて命名したような適当感満載」な感じだが、実は一般公募だったりする。
そもそも 「シブがき」って「渋柿」じゃなくて「シブい悪ガキ」のことなんだよ。「シブい」って言葉が流行ってたんだね当時。「シブい=ちょっと不良っぽくて硬派でかっこいい」みたいな意味だったと記憶してるんだけどね。
で、「仙八」終了後は「仙八トリオ」と呼ばれていたこの3人、雑誌を通して「ぼくたちシブい悪ガキに名前を付けて下さい」と、グループ名を一般公募。そうしてついた名前が「シブがきトリオ」。ヒネりねえなあ。そのまんま。命名者、3分も考えてねえだろ絶対。つか、何のための一般公募なんだよ。意味ねえじゃん全然。
のちに、レコードデビューを契機に「シブがき隊」と改名。トリオ→隊への改名。これもあんまし意味ねえ感じだけど。たぶん「硬派感」を醸し出すための改名と邪推。
そう、「硬派」。シブがき隊のコンセプトは「硬派」「ヤンチャ」「ちょっぴり不良」。
マッチこと近藤真彦で確立した「硬派でヤンチャ」路線を更に強化した結果、「ヤンキー」になってしまった最初のジャニーズアイドル。

2012年現在の価値観からは想像しにくいと思いますがね。1980年代初頭は「ヤンキー=かっこいい」という異常な合意形成が日本中を席巻してたんで。不良ではない一般的なフツーの中高生が「横浜銀蝿」を聴き、カバンに「亜無亜危異」のステッカーを貼り、原宿で「竹の子族」を見物し、「積み木くずし」のドラマを視て、「なめ猫」のキャラグッズを所有してたという異常事態がフツーにあったんですよ、80年代初頭には。
イデオロギーをファッションやカルチャーとして消費する」という80年代の軽佻浮薄な時代の空気は、ヤンキー(不良)さえポップカルチャーとして消費してしまったんですねえ。恐ろしいことです。


 

 

 

 
 

彼らのシングル曲を列挙すると「Zokkon命(ラブ)」「挑発∞」「サムライ・ニッポン」「喝!」「アッパレ! フジヤマ」「トラ!トラ!トラ!」てな、「まあ、いかにも」な感じなんで、社会派の人なんかは「シブがき隊の歌って右翼っぽいよね」と嫌悪感を露にしてましたが。ちげーよ右翼じゃなくてヤンキーセンスなんだよアレは。ヤンキーと右翼って親和性は高いけどな。「アイドルを使って若者を右翼思想に洗脳」とか、そんな陰謀論めいた思想性なんか80年代前期の日本(ましてやジャニーズ)にあるわけねえよ深読みしすぎ。
 
 



 
シブがき隊のデビュー曲「NAI・NAI 16」
動画は振り付け練習のために左右反転してるもの。
ホントは「挑発∞」が良かった(ヤンキーセンス・微妙な歌唱力・踊れてない踊り・大袈裟で暑苦しいリビドー全開な歌詞、その全ての集大成)んだけど、検索しても見当たんないから、コレで。
いやー。反転しててもすげえね。衣装とか振り付けとか歌唱力とか歌詞とか。「やりたい」というヤンキー少年のプリミティブなリビドー全開なのに、「欲しけりゃ今すぐすがりつけ」とか、その上から目線は一体どうした脳の作用ですか。このアクティブな「やりたい」パワー全開肉食男子ソング、今時の草食系男子に聴かせたら、少しは少子化の歯止めになるでしょうか。

シブがき隊は「バック転ができない」という意味でもジャニーズ事務所におけるマッチの後継者的位置づけだった。そんなもんまで継がんでいいと思わなくも無いが、満足にレッスンも受けずにデビューしたんで、踊りがアレで歌唱力がコレなのはもうしょうがないというか。しょうがないんだが、すげえ。「踊れてない人に踊らせてる」この振り付け、このフォーメーション。
わたしはたぶん結構シブがき隊が好きなんだろうなあ。
今となっては、だけどね。
シブがきってジャニーズ初のバラドルだからさ、これが無かったらSMAPも嵐も無かったよ、たぶん。



あ、そーいえば90年代も末のある日、なんの気なしにTV見てたら「どっかで見たな、こういうの」というフォーメーションという3人組に遭遇して笑いが止まらなくなった。「deeps」っていう「SPEED」のバチもんのギャル3人組なんですが。歌唱力といい、リビドー全開のバカ丸出しの歌詞といい、「踊れてない踊り」のフォーメーションといい。これはシブがき隊のDNAが世代と事務所と性別の壁を越えて作用したものだと思う。10年に1回くらい出てくるよねえ、シブがき隊のDNAの継承者。隔世遺伝つうか。
ちなみに00年代は「羞恥心」。ただし、「羞恥心」は「あっからさまな確信犯的(ホントはこの使い方、日本語として誤用だけどまあいいや)企画モノ」なんで「deeps」ほどは笑えない。
 



deeps - ハピネス(1998)
 

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