前世紀遺跡探訪<80s-バブル終焉>

80年代~バブル文化圏終焉(実質的なバブル崩壊は91年だが、バブルの延長的な空気が即終了したわけではないので90年代前半までとりあえずバブル文化圏と仮定しとく)の音楽や音楽をとりまく事象について、あれこれと。

80年代用語「プッツン」 (1986)

【ぷっつん】
プッツン(ぷっつん) - 日本語俗語辞書
ぷっつんとは張り詰めた糸が切れるさまを表す言葉だが、これを脳の血管が切れる音(脳の回線が切れる音)として捉え、我慢の限界を超え、正常な判断や正常な行動が出来なくなるさまを表す言葉として使用。ぷっつんは片岡鶴太郎のネタのひとつとして普及。鶴太郎出演の「つるちゃんのプッツン5」という番組もあった。また、同番組放送開始した1986年には新語・流行語大賞の流行語部門・大衆賞を受賞(受賞者は片岡鶴太郎)。翌1987年にはフジテレビの月9で『アナウンサーぷっつん物語』と、人気ドラマのタイトルにも使われた。
ぷっつんしやすい女優をぷっつん女優といった使い方もする。


 
 


日本語俗語辞書によると「プッツン」が流行語になったのは1986年だそうだ。
言い出したのは片岡鶴太郎
流行語大賞を受賞した言葉というのは大概寿命が短くなるので、この言葉も早々に死語になるかと思っていたら、案外定着してしまい、思ったよりも長く使われていたように思う。
 


とはいえ、1994年に筒井康隆が「あたしゃ、キれました。プッツンします」と断筆宣言行った時はさすがにキツかったなあ。「作家が俗語を使うなんて日本語の乱れがどうのこうの」という意味でキツんじゃなくて、その言葉、もう既に死語に片足突っ込んでるから作家として今使うのはどうだろう?という意味でキツいと思ったわけだけど。
「堪忍袋の緒が切れた」的なニュアンスで「プッツン」を用いているというのはわかるんですがね。私は中学・高校と筒井康隆ばかり読んでかなり思考面で影響を受けただけに、この局面でこの言葉を使われたのはちょっと辛かった記憶がある。
 


どんなスラングも流行語も語源や経緯があって存在するし、時代に支持されなければ流行語にもなりえない。
誰かが意図的に新しい言葉を流行らせようとしても、時代に支持されなければ流行語にはならないし、逆に時代に支持されなくなれば、どんなに流行った言葉も「死語」となる。時代を超えて残っていけば、やがて誤用や隠語も「常用語」になる。これは現代に限ったことではなくて、奈良時代だって平安時代だってそうだ。
今はネットがあるから、その移り変わりが尋常でなく速いスピードで展開してる。ネットスラングに目くじらを立てる人もいるが、私はその移り変わりを見るのが結構楽しい。言葉の持つエネルギーは面白い。
 
「プッツン」はほんとにやばいものまで笑い飛ばす80年代という時代だったからこそ支持された。60年代や70年代だったら流行語にはならなかっただろう。

 
私は「プッツン」という言葉が嫌いだ。
「一時期流行ったけど今は死語に片足突っ込んでるから」「軽薄な俗語だから」嫌いなのではない。本来もっとまずい状態であるはずのものを、妙にポップなものにしてしまっているから嫌いなのだ。
メンタルヘルス病んでる状態」を「プッツン」と言い換えるのは、喩えていえば「売春」を「エンコー」と表記する感覚に近いかもしれない。
 
 


80年代に一時期流行った「プッツン」の類似語に「アッブナーイ」というのがある。
私と同世代の80年代の遺物の皆様方、覚えてらっしゃるかしら?
「アッブナーイ」=「危ない」。
80年代業界スラングの1種だ。
「放送倫理コードにギリギリで接触しそうで危ない」が語源らしいが、ちょっと過激なもの・危険なもの・不都合なもの・怪しいものをポップに消費する際に使われた。「すげえ」的意味合いとしても使われていた。
「アッブナーイ」を現代俗語に翻訳すると近いのは「やべえ」ですかね。
この業界内輪ネタ「アッブナーイ」を何のアカウンタビリティも無しにテレビで連発し、お茶の間に浸透させたのは、まあ、とんねるずなんだけどさ。
とんねるずと業界内輪ウケを語り出すと長くなるんで、ちょっとこっちに置いとくけど。
ホントに危ないものまでポップにしちゃうんで、この言葉も苦手だったんすよ。
「カワイイ」と大差ない文脈で使用されてたからなあ。

 
 
「アッブナーイ」は消えたが、「プッツン」は女優に係る接頭語として芸能マスコミの見出しなどで現在もかろうじて存命中である。
芸能人の奇行や痛い言動を表現するのに便利な言葉なんだろうと思う。が、精神的にかなりヤバい状態なんじゃないか?というレベルの奇行に「プッツン」使ってポップ化をはかるのはもうさすがに勘弁してくれという気分。
奇行のポップ化にも限度があると、石原真理子藤谷美和子見てると真剣に思う。
皇居・坂下門にタクシーで乗り付け「紀宮さまは私の妹」と称して大騒ぎした藤谷美和子(徘徊騒動っていうのもあったな)と、ストーカー行為で逮捕された石原真理子石原真理子はこの弁明 (asahi.com:石原真理子が激白「はめられた」 - 芸能一般 - 文化・芸能)聞いてる限りでは、もはや立派に病気だとしか思えないんだが。
藤谷美和子石原真理子も20年前はただの空気読めないスーパーマイペースな人だったんですけどね。
ここまで病んでても、病んでることをネタにして営業(話題作り)できるんだから芸能界って、つくづくすごい業界だと思った。てゆーかカタギな業界ではこれでしのいでいくの無理。
芸能界にいると繊細な人は精神病んでしまうけど、いったん病んでしまった人にはわりと寛大な業界なような気がするな。
それがいいか悪いかは別として。
 

 
 
「プッツン」はもう死んでいいよ。
 
 
 

 

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